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多汗症の原因はストレス?症状別おススメ対策法を解説します

更新日:2022年11月30日 水曜日

多汗症とは過剰な発汗を認める汗の病気です。何らかの原因によって自律神経が乱れてしまい、通常であれば汗が出ない状況なのに発汗が起きたり、汗が止らないという現象が起きるような症状を多汗症といいます。

今回は、多汗症の種類や原因・多汗症とワキガとの違い・治療方法について紹介していきます。多汗症という汗の病気があることを知らず、過剰な発汗によって周りの人と距離を持つようになったり誰にも相談できずに苦しんでいる人がいらっしゃいます。多汗症という汗の病気を知り、医師に相談して適切な治療を受けましょう。

 

※この記事は、美容皮膚科タカミクリニック副院長の山屋 雅美医師が監修しています。

 

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多汗症の症状について
 

人間には発汗というメカニズムが備わっています。体温が上昇したままでは危険なので体が体温調節をします。汗かきやワキガなどの体質をお持ちの人もいますが、多汗症はそれらとは全く異なるもので汗の病気です。

多汗症は、日常生活で快適な状況下でも大量の汗が出て止まらない症状のことを示します。症状の重症度によってさまざまですが、手のひら多汗症の場合は汗が滴り落ちるくらい多量の汗が出て止まらずハンカチが手放せなかったり、紙が濡れてくしゃくしゃになったり、スマホが壊れてしまうなど日常生活に支障が出てしまいます。

 

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汗の種類について
 

通常の生活で出る汗には、温熱性発汗・精神性発汗・味覚性発汗の3種類があります。

 

1:温熱性発汗

温熱性発汗は暑いときや運動をしたときに出る汗です。人間は平常時に1日1ℓ程度の汗をかき、暑いときや運動をしたときには2~3ℓもの汗をかくと言われています。汗を出すことにより体温を下げて体温調節をおこなうという大切な役目を担っています。

全身から汗が継続的に出ます。全身から発汗する理由はエクリン腺という汗を出す汗腺が全身に分布しているためです。

 

2:精神性発汗

精神性発汗は緊張したり不安なときに出る汗です。緊張したり危険を感じたりするときに手に汗をかいたり脇から汗をかきます。精神的な刺激が原因で汗が出るので精神性発汗と呼んでいます。体の一部分から発汗し、緊張する場面の表現に「冷汗が出る」「手に汗握る」などがありますが、これは精神性発汗の状況を示しています。

 

3:味覚性発汗

味覚性発汗は辛い物を食べたときに出る汗です。香辛料が効いたものやすっぱい物を食べると味覚の刺激による反射反応で汗が出ます。鼻や額といった限られた部位から一時的に出て食べ終わると引きます。

 

このように汗には基本的に3種類あり、それ以外の状況下で汗が異常に出たり止まらない場合に多汗症が疑われます。

 

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多汗症とは?
 

多汗症を診断する場合は、問診と症状から診断しその後に詳しい検査や重症度を判定していきますが、下記の6つの症状のうち2項目以上当てはまる場合は多汗症と診断されます。

①最初に症状が出たのが25歳以下

②左右対称性で発汗が見られる

③睡眠時は発汗が止まっている

④1週間に1回以上多汗のエピソードがある

⑤家族歴がみられる

⑥多汗によって日常生活に支障が出ている

 

さらに、重症度は下記の自覚症状によって4つに分類され、下記の③・④の場合は重症多汗症の指標となります。

①発汗は全く気にならない。日常生活に全く支障がない。

②発汗は我慢ができるが、日常生活に時々支障がある。

③発汗はほとんど我慢ができず、日常生活に頻繁に支障がある。

④発汗は我慢ができず、日常生活に常に支障がある。

 

参考:

<Hornbergerの多汗症診断基準>※日本皮膚科学会 原発性局所多汗症治療ガイドライン

<重症度分類;HDSS>※日本皮膚科学会 原発性局所多汗症治療ガイドライン

 

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多汗症の種類について
 

多汗症は発汗部位によって、全身に多汗症の症状が出る「全身性性多汗症」と、体の一部分に限局された形で出る「局所性多汗症」とに分類されます。それぞれの特徴と原因は以下のとおりです。

 

全身性多汗症の特徴と原因について

全身性多汗症は、普通の人以上に全身に汗をかくものです。原因になる疾患が特にない「原発性(特発性)全身性多汗症」と、薬剤性・循環器疾患・感染症・内分泌/代謝性疾患、悪性腫瘍、中枢神経疾患などが原因として挙げられる「続発性全身性多汗症」があります。

 

局所性多汗症の特徴と原因について

局所性多汗症は、手のひら、頭部、顔面、脇、足の裏など、体の一部に限局して汗をかくものです。特に頭皮・顔面多汗症は、一日中発汗が継続するケースもあります。局所性多汗症も、「原発性局所性多汗症」と、「続発性局所性多汗症」があります。

 

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多汗症の原因はストレス?
 

多汗症の原因は、まだまだ分かっていないことが多いのが実情です。ただ、精神的緊張や不安な状況下で症状が現れるといった精神的要素が多くの患者にみられます。

自律神経という言葉を聞いたことがあるかと思います。自律神経とは意志とは無関係に働き、体の機能(内臓・血管・腺など)を調節します。

この自律神経には交感神経と副交感神経とがあり、交感神経は体を活発に動かすための神経で副交感神経は体を休ませリラックスさせるための神経です。交感神経が優位に働いているときに発汗が起こり、副交感神経が優位なときに発汗は起こりません。発汗は交感神経が優位に働いているときに起きるので、多汗症の患者さんは交感神経が優位に働いているということを示唆しています。

自律神経が正常に働いている場合、交感神経と副交感神経とが交互に切り替わります。切り替わるというのは、交感神経が働いているときは副交感神経が休み、副交感神経が働いているときは交感神経が休むということです。

しかし、現代はIT化が進みパソコンやスマホ、電化製品の普及により交感神経が活発になりやすい環境下にあります。社会では人間関係によるストレスも受けやすい状況です。このような背景から交感神経と副交感神経の切り替えがうまく働かなくなり、多くの人がさまざまな症状や悩みを抱えています。多汗症は、そんな現代社会に見られる汗の病気と言えるでしょう。

 

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多汗症の悩み
 

多汗症は症状の段階や重症度によって異なりますが、患者さんの多くが日常生活の上で支障を感じていらっしゃいます。具体的な例を挙げましょう。

・夏にワキの汗ジミが気になり、着られる服が限られる

・学校や職場の制服のワキの汗ジミがきになって、腕を上げることができない

・テストの解答用紙に手を置いていたら用紙が汗で破れてしまう

・会社の挨拶周り等で握手することを躊躇してしまう など

 

患者さんの中には診断されるまで多汗症という汗の病気があることを知らなかったり、身近な家族や知人に理解されないまま日常生活を制限して過ごしていた人もいらっしゃいます。一人で悩みを抱え込んでしまうとQOL(生活の質)が低下してしまうだけでなく、場合によっては対人恐怖症などの精神疾患へと発展してしまう可能性もあります。我慢せず気になる症状がある場合は早めに医師に相談しましょう。

※平成21年度厚生労働省難治性疾患克服研究の特発性多汗症班による全国疫学調査によると医療機関への受診率は6.3%と低く、病院に受診できていない患者さんが多いことが示唆されています。

 

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多汗症とワキガとの違い
 

ところで、多汗症とワキガは違うものであるということも説明しておきたいと思います。

ワキガは医療用語では「腋臭症」と呼び、多汗症もワキガ(腋臭症)も、同じ脇の下に発症しますが、多汗症の汗は、サラッとした水状の汗です。エクリン腺という汗腺から発汗し、臭いもほぼありません。一方、ワキガの汗はベタっとした汗で、アポクリン腺という汗腺から発汗します。アポクリン腺の分泌物自体は臭いはほとんどありませんが、アポクリン腺の汗と皮脂腺の皮脂がまざり、細菌が作用することで悪臭が発生するのです。

このように多汗症とワキガは、同じ汗でも性質が異なるものです。自覚症状のみでは正確に分からないので、汗の悩みがある際には医師に相談して適切な診断を受けることをおすすめします。

 

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多汗症対策について
 

多汗症を引き起こす原因は、さまざまなものが考えられます。より効果的な対策を講じるためにも、まずは専門医に相談することが大切です。なお、多汗症の治療は主に外用薬ですが、発汗部位や重症度、また患者さんご自身の希望により併用療法として内服薬や注射・手術がおこなわれます。以下、各治療法の特徴をご紹介します。

 

【1】外用薬・内服薬による多汗症治療

<外用薬>

幅広い年齢層と、すべての部位に使用できるのが塩化アルミニウム外用液(症状の重症度に応じて単純外用から密封療法があります)です。ただし、副作用として肌の刺激感や炎症が起きることがあります。これらの副作用軽減のために保湿剤やステロイド剤が処方されることもあります。

<内服薬>

内服薬は外用薬やボトックス注射が無効な場合などに処方されます。また、発汗に対する精神的な不安症状などに対しては、自律神経に作用する薬や抗不安薬が処方されることもあります。

薬には副作用が起きる可能性があります。院内処方を受ける場合は、医師からしっかり説明を受けましょう。

 

【2】交感神経切除術による多汗症治療

多汗症治療として用いられる手術は、交感神経遮断術です。

発汗は交感神経から神経伝達物質が放出され汗腺が刺激されることによって起こるため、該当する交感神経部分を手術により遮断します。遮断術方法には交感神経の切断除去や、切断せずに神経をクリップで挟むものなどがあり、発汗を劇的に抑えることが可能となります。なお、交感神経遮断手術には、開胸手術である胸部交感神経遮断手術や、手術による身体的負担を軽減する内視鏡的胸部神経遮断術があります。

しかし、交感神経遮断術のデメリットとして、代償性発汗という現象が起きてしまいます。代償性発汗とは、多汗症(手掌・足裏・頭皮)としての発汗場所を失った汗がまるで引越しをするかのようにほかの部分から発汗を起こす現象です。主に背中、胸、大腿部に多く見られます。この代償性発汗症状には個人差がありますので、手術を受ける前に必ず医師よりインフォームドコンセントを受けて納得してから決断するようにしましょう。

 

【3】ボトックス注射による多汗症治療

ボトックスとはボツリヌス毒素を薬として使用できるように精製したものです。ボトックスは、発汗を促進している交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌をブロックする作用があり、ボトックスを注射した周辺の汗腺からの発汗が抑制されます。

ボトックス注射という施術は、汗の量が減る、治療時間が短時間、ダウンタイムがほとんどないといったメリットがありますが、同時に、市販の制汗剤に比べると料金が高い、効果の期間は約半年といったデメリットもあります。

 

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まとめ
 

掌からの汗が止まらない、ワキ汗がひどくて汗ジミができて困っているー。“体質”と思っているその症状はもしかすると多汗症の可能性があります。多汗症という汗の病気はあまり知られていないため、多くの方が市販の制汗剤に頼っていたり日常生活に支障を感じながらの生活を送っています。多汗の症状を体質と諦めてしまう前に、一度適切な診断・治療を受けてみましょう!

汗の悩みを持っていた多くの患者さんが治療を受けたことにより快適な日常生活を取り戻せています。

 

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