ニキビ医療用語

ア行

アクネ菌(アクネ桿菌)とは、人の皮膚や毛穴に生息している皮膚常在菌の一つです。脂質を餌とするため皮脂分泌量の多い顔や背中に多く存在します。通常アクネ菌は悪さをすることはなく、むしろ肌を弱酸性に保ち有害な細菌の増殖を防ぐ役割をしているのですが、アクネ菌が増殖しすぎると炎症を引き起こしニキビ悪化の原因となります。
酸素のない環境を好む嫌気性細菌であるアクネ菌は、酸素のない環境で増殖するという性質をもち、酸素が少ない毛穴にもともと多く存在しています。角質肥厚などによって毛穴が塞がれ、皮脂が溜まった白ニキビの状態は、アクネ菌の苦手な酸素がなく、餌となる皮脂が豊富にある好環境となるため、アクネ菌が異常に増殖することで炎症がおこり、白ニキビから炎症を伴う赤ニキビへと悪化してしまうのです。

アダパレンは、レチノイド(ビタミンA)と似た作用をもつ成分で、保険適用ニキビ薬の「ディフェリンゲル」「エピデュオゲル」に配合されています。表皮の角化を抑えて毛穴をつまりにくくする働きによって、ニキビの初期段階である面皰(白ニキビ)をできにくくしたり、白ニキビや赤ニキビの数を減少させます。皮むけ、乾燥、赤み、ヒリヒリ感などの副作用があるため、医師の指示に従って使用します。

アンドロゲンとは、テストステロンなどの男性ホルモンおよび、男性ホルモン作用をもつホルモンの総称です。アンドロゲンは、とくに成長期に大量に分泌され、声変わりや、筋肉や骨の発育、性機能の形成、ヒゲや胸毛の成長などを促します。さらに、皮脂の分泌を促進したり、角質を厚くするはたらきもあるため、ニキビの発生にも深く関与しています。女性も、男性に比べれば少量ではありますがアンドロゲンが分泌されています。

イソトレチノインとは、ビタミンA誘導体のひとつで、皮脂をつくる皮脂腺を小さくして皮脂の分泌を抑えたり、角化の異常を抑えて毛穴をつまらせにくくする作用、抗炎症作用をもつ成分です。イソトレチノインを主成分とした飲み薬は、米国や欧州ではニキビの治療薬として1980年代から使用されています。日本では保険適用とされていないため自費診療での処方となります。薬の製品名としては「アキュティン」「ロアキュタン」「アクネトレント」などがあります。

炎症とは、からだの細胞や組織が刺激や損傷を受けたときに、からだを守って修復しようとする防御反応 のことです。炎症が起こった時の代表的な症状には、「赤み」「腫れ」「痛み」「熱感」などがあり、炎症が起こる原因には、細菌やウィルスの増殖、異物に対するアレルギー反応、組織の損傷などがあります。
赤く腫れたニキビは、毛穴内でアクネ菌が増殖して炎症を起こした状態です。紫外線や、ニキビを潰す行為もまた炎症を引き起こす要因となります。

黄色ブドウ球菌とは、皮膚、鼻、のど、腸などあらゆるところに生息している常在菌の一つです。細菌の中でも比較的毒性が高く、皮膚上で異常に増殖すると肌荒や皮膚炎を引き起こします。肌がアルカリ性に傾くと増殖しやすくなるため、皮膚常在菌バランスを崩さないようにして肌を弱酸性に保つことが大切です。顔にできる面疔やいわゆるおできは、黄色ブドウ球菌が感染を起こしたものです。

カ行

過酸化ベンゾイル(BPO)は、殺菌作用と角質剥離作用をもつ成分で、ニキビの原因菌であるアクネ菌を殺菌したり、皮膚表面の古い角質を剥がして毛穴のつまりを解消できることから、「ベピオゲル」「デュアックス配合ゲル」「エピデュオゲル」といった保険適用のニキビ薬に配合されています。ニキビに対する効果がある反面、乾燥や肌への刺激といった副作用があるため、使い始めは狭い範囲から医師の指示に従って使用します。使用中は保湿や紫外線対策が必須です。

活性酸素とは、呼吸によって取り込んだ酸素の一部がエネルギー代謝の過程で発生した物質で、身体の免疫機能を維持する働きがある一方、あらゆる物質と反応し酸化させる(錆びさせる)性質があるため、増えすぎると正常細胞にダメージを与え健康や美容に影響を及ぼします。
とくに、活性酸素が脂質と反応することで作り出される「過酸化脂質」は、皮膚に炎症を引き起こしニキビ悪化の原因となることで知られています。紫外線や喫煙、ストレス、酸化した食品などは活性酸素を過剰に作り出す原因となります。

丘疹(きゅうしん)とは、皮膚の表面が盛り上がった状態の発疹を指す医学用語です。炎症を起こして赤くなっていれば「紅色丘疹(こうしょくきゅうしん)」と言います。
一般的に、毛穴の中でアクネ菌が増殖することで炎症を起こし毛穴のまわりが赤く盛り上がった状態を「赤ニキビ」と言いますが、医学的には赤ニキビの状態を紅色丘疹と言います。

経口抗菌薬(内服抗菌薬)とは、細菌の増殖を抑えたり死滅させる作用をもつ飲み薬のことを言います。アクネ菌やブドウ球菌を抑える作用があるため、アクネ菌などが過剰に繁殖し強い炎症を起こしている赤ニキビや黄ニキビに処方されることがあります。
炎症を食い止め赤みや腫れを鎮める効果がある一方で、肌に塗る外用抗菌薬とは違い、からだ全体に作用するため、めまいなどの副作用が起こったり肌以外の身体のあらゆるところに存在している常在菌をも死滅させてしまう点や、長期間の服用は耐性菌が出現し効果が出にくくなってしまう点に注意が必要です。

嫌気性菌(けんきせいきん)は、「大気を嫌う性質の細菌」と書きますが読んで字のごとく、酸素がない状態で生息する細菌のことを言います。嫌気性菌は、酸素があるとまったく発育できない偏性嫌気性菌と、酸素があっても発育できる通性嫌気性菌に分けられます。
ニキビの原因菌と言われるアクネ菌は、通性嫌気性菌なので酸素があっても生息はできますが、酸素がない環境をより好みます。そのため酸素が入ってきにくい毛穴の奥に多く生息しています。

抗炎症作用とは、炎症が起きたときにその炎症を抑える作用のことを言い、抗炎症作用をもつ成分のことを「抗炎症成分」と言います。
敏感肌用の化粧品には、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリル、アラントインなど抗炎症成分が配合されていることが多く、炎症を起こしやすいニキビ肌のスキンケアに適しています。トラネキサム酸にも抗炎症作用があり、イオン導入などで肌に浸透させることでニキビ改善効果が得られます。

硬結(こうけつ)とは、本来やわらかい組織が炎症やうっ血などにより硬くなることを表す医学用語です。ニキビの場合、強い炎症を伴うニキビが何回も同じところに繰り返しできることで、しこりのように皮膚が固く盛り上がることがあります。医学的にはこの状態を硬結と言います。

活性酸素の発生や働きを抑えたり、活性酸素を消去する作用を抗酸化作用と言い、抗酸化作用をもつ物質のことを「抗酸化物質」と言います。抗酸化物質には、体内でつくられるもののほかに、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA(カロテン、アスタキサンチンなど)、ポリフェノールなどがあります。

抗生物質とは、細菌の増殖を抑えたり死滅させる薬(抗菌薬)のうち微生物からつくられるものを言います。
抗生物質は炎症を起こした赤ニキビの治療にも使われます。赤ニキビはアクネ菌の過剰繁殖によって炎症を起こしている状態なので、抗生物質を使ってアクネ菌の増殖を抑えることで鎮静することができます。抗生物質には塗り薬(外用薬)と飲み薬(内服薬)があり、症状や体質に合わせて医師が処方します。

サ行

ざ瘡(ざそう)とは、毛穴がふさがることから始まる皮膚疾患のひとつで、いわゆる「ニキビ」のことを指す医学用語です。広く一般的に発症するものなので、ありふれた、という意味合いの「尋常性」という言葉をつけて「尋常性ざ瘡」とも呼ばれます。ざ瘡の症状は様々で、大きく分けると、炎症のないニキビと炎症を起こしたニキビに区別されます。

サリチル酸は、ケミカルピーリングで使用される代表的な酸の一つで、古い角質を剥離して肌の再生を促す作用があります。サリチル酸ピーリングでは、30%濃度のサリチル酸マクロゴールがよく使われます。古い角質や皮脂を溶かし毛穴のつまりを改善してくれるため、美肌目的のほか、ニキビ治療としても用いられます。副作用には、赤み、乾燥、肌刺激などがあります。サリチル酸は化粧品にも用いられますが、配合濃度は0.2%までに規制されています。

常在菌とは、人のからだに常に生息している細菌のことです。腸や皮膚をはじめ、からだのあらゆる部位には、多種多様な常在菌が存在しています。常在菌は、いい働きをしてくれる「善玉菌」、悪い働きをする「悪玉菌」、善玉菌と悪玉菌のバランスに左右され良い働きも悪い働きもする 「日和見菌(ひよりみきん)」に分類され、それぞれが共存しバランスを保っています。悪玉菌が異常に増殖して優勢になると体や皮膚に悪影響が起こりますので、正しい常在菌バランスを保つことが大切です。

処方薬とは、病院やクリニックで医師から処方される薬のことを言います。処方薬に対して、薬局やドラッグストアなどで購入できる薬を市販薬といいます。(処方薬は医療用医薬品、市販薬は要指導医薬品と一般用医薬品に分類されます。)処方薬は市販薬に比べて薬の効き目が強い反面、副作用にも注意が必要なため、必ず医師が診断したうえで処方します。

スピロノラクトン(製品名:アルダクトンA など)は、高い利尿作用をもつ薬で高血圧の治療や浮腫の症状改善に用いられる薬です。利尿作用のほかに男性ホルモンを抑える作用もあることから、男性ホルモンが原因で皮脂の過剰分泌が起こっていると考えられるニキビに対して処方されることがあります。よく起こる副作用として、男性の女性乳房化や女性の月経不順等が挙げられます。

タ行

ダウンタイムとは、美容施術を受けたあとに生じた、赤み、腫れ、内出血などが引いて肌が元の状態に戻るまでの期間のことを言います。ダウンタイムには個人差があり、施術の内容によっても大きく異なります。美容皮膚科にはダウンタイムを全く伴わない施術も多くありますが、レーザー治療や注入治療では数日~数週間程度のダウンタイム期間があります。美容整形の外科手術であれば完全に腫れが引くまでに半年以上かかることもあります。

テストステロンは、男性ホルモン(アンドロゲン)の代表格です。男性だけでなく、女性の体内でも少量ですが生成されています。
ニキビは皮脂の過剰分泌や角質肥厚が原因となって発生するのですが、テストステロンをはじめとした男性ホルモンには、皮脂分泌を促進したり角質を厚くする作用があるため、分泌が多くなるとニキビができやすくなります。テストステロンの分泌は、男女ともに思春期頃になると活発となり、20歳代をピークに分泌量が徐々に減っていきます。

ナ行

膿疱(のうほう)とは、皮膚が部分的に盛り上がり、中に膿が溜まった状態を指す医学用語です。一般的に、赤ニキビが悪化して化膿し、黄色や白っぽく膿が透けて見えているニキビを「黄ニキビ」と言いますが、黄ニキビの状態を医学的に言うと膿疱となります。ニキビの膿は、増殖した細菌(アクネ菌黄色ブドウ球菌など)に対抗して戦った、白血球の死骸です。

ノンコメドジェニックとは、ニキビが出来にくいように配慮して作られていることを意味します。「ノンコメドジェニックテスト済」と表記してある化粧品は、コメド(ニキビの初期段階で毛穴が詰まった状態のこと)が出来にくいことをテストで確認してある化粧品ですが、すべての方にニキビができないことを保証するものではありません。逆に「ノンコメドジェニックテスト」をしていなくても、ニキビが出来にくく作られた化粧品もあります。

ハ行

瘢痕(はんこん)とは、一般的に言う「傷あと」のことです。怪我や火傷、手術、そしてニキビなど、何らかの理由で皮膚が傷つくと、新しい組織がつくられて修復していきますが、深い傷ほど修復されたあとが目立つ瘢痕となります。ニキビの場合も、強い炎症を長く繰り返すような重症ニキビになるほど、皮膚の表面が凹んでクレーターのようになった「陥没性瘢痕」や、皮膚が盛り上がった「肥厚性瘢痕」「ケロイド」など目立つ瘢痕が残る可能性が高まります。

皮脂腺は、皮脂を分泌する器官のことで「脂腺」とも呼ばれます。皮脂腺は、毛包上部に繋がって必ず存在します。皮脂腺でつくられた皮脂は、毛包を通って皮膚表面に広がり肌のうるおいを守ります。一方で、皮脂が過剰に分泌されると、皮膚表面に排出しきれなかった皮脂がニキビを引き起こす原因となります。思春期にニキビができやすいのは、男性ホルモンの影響を受け皮脂腺が大きく発達し皮脂量が増加することに関係しています。

皮膚常在菌は、年齢・性別関係なく人の皮膚に常に存在している細菌のことです。皮膚常在菌には多種多様な菌がありますが、代表格は「表皮ブドウ球菌」「アクネ菌」「黄色ブドウ球菌」です。善玉菌である表皮ブドウ球菌には、肌を弱酸性に保ち悪玉菌である黄色ブドウ球菌の増殖を抑える働きがあります。健康で美しい肌を保つには、表皮ブドウ球菌を減らさないようにすることが大切です。

表皮ブドウ球菌とは、人の皮膚に生息している皮膚常在菌の代表格で、“美肌菌”とも呼ばれます。汗や皮脂を餌にして、脂肪酸やグリセリンを産生しています。脂肪酸は肌を弱酸性に保つはたらき、グリセリンは肌に潤いを与えてバリア機能を高めるはたらきがあります。表皮ブドウ球菌が減ると、肌がアルカリ性に傾いて黄色ブドウ球菌や真菌など有害な細菌が繁殖しやすくなり、肌荒れを引き起こします。表皮ブドウ球菌は角質層に存在しているので、過度な洗顔や、過剰な角質ケアは表皮ブドウ球菌を減らすことにつながってしまいます。

マ行

マーベロンは、女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)を少量配合した低用量ピル(経口避妊薬)で、避妊目的のほか、月経不順やPMSの改善を目的に使用されます。
ホルモンのアンバランスはニキビの原因になりますが、低用量ピルを服用するとホルモン分泌量が安定することからニキビの改善につながります。とくにマーベロンは、男性ホルモンを抑える作用があり、他の低用量ピルに比べてニキビの一時的悪化が少ないのが特徴です。

マラセチアは、真菌(カビ)の一種で、人の皮膚に広く生息している常在菌です。普段は害を及ぼしませんが、過剰に増殖して毛穴が炎症を起こすと、赤いポツポツとしたニキビによく似た症状の「マラセチア毛包炎」を生じます。
マラセチアは、栄養となる皮脂の分泌が多く高温多湿の環境で増殖します。そのため、マラセチア毛包炎は、皮脂が多く衣類で蒸れやすい、背中や胸などによく生じます。ニキビとは原因菌が異なるためニキビ薬ではなく、抗真菌薬での治療が必要です。

数時間から2~3週間程度でおさまる「急性炎症」に対して、弱い炎症が長いあいだ持続することを「慢性炎症」と言います。
慢性炎症を伴う皮膚トラブルとしては、アトピー性皮膚炎が代表的ですが、ニキビ(尋常性ざ瘡)も 慢性炎症が引き起こす病気とされています。また近年では、肌の奥で起こる微小な慢性炎症が細胞や遺伝子にダメージを与えシミ・しわ・たるみといった肌のエイジング症状の要因となっているともいわれています。

面皰(めんぽう)とは、毛穴の出口がつまって毛穴の中に皮脂が溜まっている状態のことで、コメドとも呼ばれます。面皰には、毛穴が閉じた白ニキビと、毛穴が完全には閉じていない黒ニキビがあります。面皰はニキビの初期段階であり、この時点では目に見える炎症はありませんが、進行するとアクネ菌が繁殖して炎症が起り赤ニキビへと悪化していきます。

毛孔(もうこう)とは、毛の出口にあたる部分で、皮膚の表面から見える開口部(小さな穴のように見える部分)を指しています。一般的に「毛穴」と呼ばれているのはこの毛孔部分のことです。毛孔の周囲の角質がだんだんと厚くなると、毛孔がふさがって皮脂が排出されにくくなります。そのまま皮脂が毛穴の中に溜まっていくとニキビが発生します。

毛包(もうほう)とは、表皮から真皮までを貫いている、毛や毛根を取り囲む皮膚組織のことを言い、毛嚢(もうのう)とも呼ばれています。毛包は皮膚の内部で必ず皮脂腺とつながっていて、皮脂腺から出た皮脂は毛包を通って、肌の表面に広がります。毛包には3つの種類があります。太い毛が生える「終毛性毛包」、産毛が生える「軟毛性毛包」、そして皮脂腺が発達した「脂腺性毛包」です。顔や背中にニキビができやすいのは、皮脂分泌の多い脂腺性毛包が多く集まっている部位であるためです。